日商簿記1級と全経簿記上級は、学習範囲がほぼ同じです。
どちらも深い会計知識が必要で、簡単に合格できる資格ではありません。
一方で、知名度、配点、出題傾向、試験時期などには違いがあります。
私自身、日商簿記1級レベルの内容を約2年半勉強し、全経簿記上級に合格しました。
日商簿記1級も、複数回受験しています。
この記事では、公式情報と実体験をもとに、日商簿記1級と全経簿記上級の違い、どんな人に向いているかをまとめます。
ざっくり違いをまとめると、次のようになります。
| 比較する点 | 日商簿記1級 | 全経簿記上級 |
|---|---|---|
| 知名度 | 高い。転職でも伝わりやすい | 知られていないこともある |
| 配点 | 100点満点。1つのミスが響きやすい印象 | 400点満点。部分点を拾いやすい印象 |
| 出題の印象 | 計算問題の比重が高い | 理論・記述も重め |
細かい違いはありますが、実際に両方を勉強・受験して感じた大きな違いは、この3つでした。
日商簿記1級と全経簿記上級はかなり近い資格

日商簿記1級と全経簿記上級は、科目名は少し違いますが、学習する内容はかなり重なっています。
どちらも日商簿記2級より深い会計知識が必要で、連結会計、企業会計、原価計算、管理会計など、本格的な論点まで学びます。
また、日商簿記1級または全経簿記上級に合格すると、税理士試験の税法科目を受験するための資格要件の一つを満たせます。
令和5年度からは、簿記論・財務諸表論については受験資格が不要になりました。
そのため、税理士試験との関係で見るなら、今は「税法科目の受験資格につながる資格」と考える方が正確です。
大きな違いは知名度と伝わりやすさ
日商簿記1級と全経簿記上級の大きな違いは、知名度です。
就職や転職での伝わりやすさは、日商簿記1級の方が強いと感じます。
「日商簿記1級を持っている」と言えば、経理や会計に関心がある人なら、難しい資格だと分かってもらいやすいと思います。
一方で、全経簿記上級は、知っている人がかなり限られます。
私の場合、履歴書に日商簿記2級と全経簿記上級を書いていても、面接では「簿記2級があるなら大丈夫ですね」という反応で流されたことがありました。
全経簿記上級の方が、日商簿記2級よりずっと深い内容を学ぶ資格なのに、全然伝わらない。
ここは、実際に受けてみて少し悔しかったところです。
全経簿記上級は、知名度で損をしている資格だと感じました。
合格基準と配点の違い
合格基準は、日商簿記1級も全経簿記上級もほぼ同じです。
どちらも全体で70%以上の得点が必要で、1科目でも40%を下回ると不合格になります。
いわゆる「足きり」があるため、得意科目で点を取れていても、苦手科目を大きく落とすと合格できません。
違いを感じたのは、配点の細かさです。
日商簿記1級は4科目合計で100点満点なので、1つのミスが大きく響きやすい印象がありました。
全経簿記上級は4科目合計で400点満点なので、部分点を拾いやすく、勉強してきた内容が点につながりやすい感覚がありました。
全経簿記上級の方が簡単というより、私には実力を出しやすい試験に感じました。
出題傾向の違い
実際に勉強して感じた出題傾向の違いは、日商簿記1級は計算問題の比重が高く、全経簿記上級は理論や記述が重めという点です。
日商簿記1級でも理論問題は出ます。ただ、私の感覚では、計算問題を正確に解ける方が大事でした。
一方で、全経簿記上級は、会計処理の理由や考え方を言葉で問われる問題もあります。
数字を出すだけではなく、「なぜそうなるのか」を理解していないと答えにくかったです。
計算問題をたくさん解いて得点力を上げたい人は、日商簿記1級の方が取り組みやすいかもしれません。
理論や記述も含めて、会計の考え方を深く理解したい人は、全経簿記上級の方が相性がいい可能性があります。
試験時期の違い
試験時期も少し違います。
日商簿記1級は、基本的に6月と11月に実施されます。
全経簿記上級は、7月と2月に実施されます。
日商簿記1級のあとに、全経簿記上級を受ける流れも作りやすいスケジュールです。
私も、日商簿記1級を受けたあと、自己採点の感触を見て全経簿記上級を申し込んだことがあります。
試験時期がずれているため、学習状況を見ながら受験計画を立てやすいと感じました。
日商簿記1級に向いている人

就職や転職で分かりやすく評価されたい人は、日商簿記1級が向いています。
知名度が高く、経理職の求人や面接でも伝わりやすいからです。
特に、上場企業の経理、連結決算、開示業務などに関心がある人にとっては、目指す意味のある資格だと思います。
ただし、日商簿記1級は回によって難しさの印象が変わります。
見慣れない問題が出ることもあり、当日の対応力が必要になる場面もあります。
日商簿記1級を目指す方向けに、TAC・大原・CPAラーニング・プロ簿記を比較した記事もまとめています。
全経簿記上級に向いている人
全経簿記上級は、積み上げた会計の学習を一つの結果につなげたい人に向いています。
全経簿記上級は勉強してきた内容が点に反映されやすい試験でした。
理論問題や記述問題もあるため、会計処理の理由や考え方を言葉で説明する力も求められます。
税理士試験の税法科目の受験資格につなげたい人にも、選択肢になります。
財務諸表論などの会計科目を見据えて、理論面を鍛えたい人にも良い資格だと感じます。
全経簿記上級を取ってよかったこと

全経簿記上級に合格してよかったのは、長く続けてきた会計の学びを、自分の中で区切りのある成果にできたことです。
せっかく時間をかけて取得したので、もう少し知名度が上がってほしいというのが本音ではありますが、会計を深く理解するための土台になった資格だと感じています。
実務でも決算に関わる業務や、会計処理の意味を理解する場面では、勉強していたことが役立つこともありました。
日商簿記1級レベルの学習を続ける中で感じた、講座や先生との相性、学び方の違いについては、こちらの記事で詳しく書いています。
両方受けるのも選択肢
日商簿記1級と全経簿記上級は、どちらが上というより、重視するものによって選び方が変わる資格だと思います。
就職や転職で分かりやすく評価されたいなら、日商簿記1級の方が伝わりやすいです。
一方で、全経簿記上級には、理論問題や記述問題を通して、会計の考え方を言葉で整理する練習になるメリットがあります。
ただ、私自身は、どちらか一つに絞らなくてもいいと思っています。
試験時期もずれているため、学習ペースを保つためにも今の実力を確認するためにも、両方受けるのは現実的な選択肢です。
学習範囲が近いからこそ、片方だけに絞らず、受験機会を増やすという考え方もありだと思います。
簿記1級レベルの知識が、非上場企業の経理でどれくらい役立ったかについては、こちらの記事で具体的に書いています。




